転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


118 普通はいっぱい狩れないんだって



 ジャイアントラビットの足を持ちやすいように縛り、ディック兄ちゃんがそれをヒョイって肩に担いだ。

 その姿を見て魔道具のおかげでホントに軽そうだし、これなら次の狩場に移動するのも簡単だねって思ってた僕は、次のディック兄ちゃんの言葉にびっくりする事になったんだ。

「さぁ獲物も狩れた事だし、村に帰るか」

 だってもう帰るって言い出したんだもん。それになんと、その言葉にテオドル兄ちゃんまで頷いてるんだから二度びっくりだよ。

「え〜、まだ森に着て1時間ちょっとしか経ってないよ? それに獲物もジャイアントラビット一匹だし。なのにもう帰るの?」

 だから僕は何でもう帰るのかってお兄ちゃんたちに聞いてみたんだけど、そしたら思いがけない返事が返ってきたんだ。

「何を言ってるんだ、ルディーン。獲物が獲れたんだから、帰るのは当たり前だろう?」

「えっ! でもまだ1匹だけだよ?」

 なんとディック兄ちゃんは、1匹でも獲物が獲れたら普通は村に帰るだろって言うんだ。そしてテオドル兄ちゃんも、それに同意するように頷きながら僕の方を見てる。

「でもでも、まだ日が暮れるまでにはかなり時間があるもん。折角森まで来たのに、こんなに早く帰るのはもったいないよ」

「確かにそうだけど、これ以上森にいても獲物が獲れるとは限らないだろ?」

「そうだよ、ルディーン。そもそも、待ち伏せしての狩りでこんなに早く獲物が取れる事は滅多に無いんだ。流石に一日で一匹も獲れないなんて事はまず無いけど、それでも3〜4時間は魔物が現れないなんて事もあるんだから今回は運が良かっただけで、獲物が獲れたら村に帰るのが普通なんだよ」

 えっ、普通はそんなに獲れないものなの? そう思ってディック兄ちゃんの顔を見ると、テオドル兄ちゃんの言ってる事が本当だって解る。だって、もっと狩りを続けようって言ってる僕の事を困った顔で見てるんもん。

 そっか。一日で1匹くらいしか狩れないのが普通なんだね。

 そう言えば僕も探知魔法を覚えるまでは何日も草原で何も狩れない日が続いたっけ。そう考えると、毎日必ず何かしらの獲物が狩れるって言うのは、実はとっても凄い事なのかもしれない。

 僕、お父さんと一緒に探知魔法を使ってやった狩りしか知らないから、ちょっと勘違いしてたのかも。確かにみんなが僕みたいなペースで獲物が狩れるんだったら、お兄ちゃんたちのレベルももっと高くないとおかしいもんね。

「それにな、軽くなってるとは言えこんなの大きな荷物を持って待ち伏せなんてできないだろ?」

「そっか。そうだよね」

 確かに大きい上に血の匂いがする物を横において待ち伏せなんてできないよね。だって魔物の血の匂いがしてたら、他の魔物は近づいてこないって言ってたもん。

 と、ディック兄ちゃんの話を聞いて僕がそんな事を思ってたら、

「そうだぞ。だから例え狩りを続けるにしても、どのみち森の外までは一度行かないといけないんだ」

 テオドル兄ちゃんが気になる事を言い出したんだ。

 狩りを続けるなら、一度森の外に出なきゃいけないの? それってどういう事なんだろう。

「ねぇ、テオドル兄ちゃん。森の外に行けば、狩りを続けられるの?」

「ああ、森の外には狩った獲物を安全に置いておける場所があるからね」

 なんと、森の外には狩った獲物を置いとける所があるらしい。でも、僕たちが入ってきた森の入り口には獲物を入れておくような建物はなかった気がするんだけど?

「まぁ口で言っても解らないだろうから、一度森の外に出よう。実際にその目で見れば、ルディーンならすぐに理解するだろうからな」

 と言う訳で、僕たちは一度森の外に出る事に。

 そんな森の外に出る途中、探知魔法で不意打ちされないように周りを探りながら進んでたら帰り道の木の上にビックピジョンがとまってる事を見つけたんだ。

 だから、お兄ちゃんたちに、

「ねぇ、帰り道に獲物がいるみたいだから、狩ってもいい?」

 って聞いてみたら、不思議そうな顔をされたけど簡単に狩れる様ならいいぞって言ってくれたから僕はその場で魔力を体に循環させるとマジックミサイルでビックピジョンの頭を撃ちぬいたんだ。

「わっ! ルディーン、いきなり何をするんだ!?」

「えっ、だって今聞いたでしょ。ビックピジョンを狩ってもいい? って。だから僕の魔法で狩っただけだよ。ほら、あっちに落ちてるから、早く行こっ!」

 僕はそう言うと、驚いてるディック兄ちゃんの手を引いて倒したビックピジョンの元へ。

「ホントにビックピジョンだ。まさか鳥の魔物をこんなに簡単に狩れるなんて」

「お父さんが言ってるのを聞いてはいたけど、実際にこの目で見てみると驚きだね」

 するとお兄ちゃんたちは、木の下に落ちているビックピジョンを見てびっくりした顔をしてたんだ。

 でも何で? 僕、ちゃんと狩るよって言ったよね。嘘なんか言うはず無いんだから、いるのは当たり前じゃないか。

 そう思ってお兄ちゃんたちに、

「僕、嘘なんかつかないよ!」

 って怒ったら、お兄ちゃんたちは悪い悪いって言いながら、何でそんな事を言ったのか教えてくれたんだ。

「あのなぁ、ルディーン。鳥の魔物って言うのは全般的に警戒心が強いんだ。だから狩ろうと思ったら慎重に行動しなくてはいけないし、それにかなり正確に弓が射れる人じゃないと打ち洩らす事も多いんだ」

「そうだぞ。草原にいる鳥と違って魔物化してる鳥は生命力が高いからね。きちんと急所に当てないと例え矢を当てられても逃げられてしまう事が多いんだ。だから鳥の魔物を狩る時は普通、まず1人目が魔物の急所を狙って矢を射って、それが当たる寸前に飛び立つのを想定してもう一本矢を射るようにするんだよ。そうすれば例え一発目の矢が急所からそれても翼を広げて無防備になっている体に矢が当たるから、打ち洩らす確率が大幅に下がるからね」

 なるほど。僕の場合は魔法で狩るから急所を外す心配は無いけど、矢で射る時は急に風が吹いたり、途中にある木の枝が邪魔になったりしてうまく急所に当たらないなんて事もあるかもしれないもん。

 そう考えると、鳥の魔物を狩る時は二人一組で狩る方が効率がいいんだと思う。

 二発め矢が無駄になるかも知れないからちょっと勿体無い様な気もするけど、逃げられちゃうよりはいいからね。


 お兄ちゃんたちの説明を聞いて機嫌を直した僕は、早速狩ったビックピジョンの血抜きをしようってお兄ちゃんたちに言ったんだ。けど、

「いや、一度森の外まで行ってそこで血抜きをしよう。ここで血抜きをするとなると、その間ジャイアントラビットにつけた魔道具の魔力が無駄になるからな」

 ディック兄ちゃんがそう言ったもんだから、ジャイアントピジョンはそのままテオドル兄ちゃんが持って森の外に出ることにしたんだ。


 森の外に出ると早速テオドル兄ちゃんはビックピジョンの足に縄を括り付けて、近くの木にぶら下げて血抜きを始める。そしてディック兄ちゃんはと言うと、

「ルディーン、こっちだ」

 そう言って、狩った魔物を安善において置けるっている場所に僕を連れて行ったんだ。

 で、その場所っていうのは、

「ディック兄ちゃん。ここって、馬車を置いとくとこ?」

「ああ。あそこに魔道具があるだろ? あれを起動するとこの場所の中には魔物や動物が入って来れなくなるから、安全に狩った魔物を置いておけるんだ」

 そう、お兄ちゃんたちが言う魔物を安全に置ける場所って、前にお父さんたちと一緒に来た時に乗ってきた馬車を置いたとこだったんだ。

 そう言えばここには魔物よけの魔道具があるから、ここに置いておけばもう一度森に狩りに出かけても動物にあらされる心配は無いよね。

 でもこんなとこに魔物を置いて、今度馬車できた時にお馬さんが怖がったりしないのかなぁ? そう思って聞いてみたんだけど、

「何を言ってるんだ? その狩った魔物をいつも運んでる馬車の馬だぞ? 怖がるはず無いだろ」

 なんて笑われちゃった。

 そりゃそうだよね。失敗失敗。 


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